これだけは読んでおいてほしい不朽の名作小説を紹介していく!!
更新はかなりゆっくり。
>>2
人を殺して、育った修道院に戻ってきた青年が主人公。
僕の耳の奥、鼓膜に接するその内側にしこまれているのはわりと性能の良い銀色をした音叉だ。その音叉がいきなり共鳴した。僕は在日米軍払い下げのパイプベッドを軋ませ、腹筋だけでゆっくりと上体を起こした。そのせいで耳に突っ込んでいた鉱石ラジオのイヤホンが引っ張られ、耳の穴から抜け落ち、床から三センチくらいの高さで左右に揺れて振り子のまねごとを始めた。じっと耳を澄ます。白がセメントで固めた地面を行く。小走りに。狂おしく。白の足音はいつだってちちちちちと金属質だ。青い匂いの煌めきが脳裏をはしった。鼻の奥がつんとした。たかが犬の足音だ。だが鉄とこすれる響きがある。おきあがることもないのだが、振り子のイヤホンと鉱石ラジオ本体をポケットに入れて、外に出た。
>>6
ありがとうw
男子高校生が主人公の一人称青春小説。
友人に勧められて読んだ一冊で、読む前は「女の作家が男子高校生の気持ちなんてわかんのかよw(一人称なので)」と思っていたが、読んでびっくり超面白い。
ショットバーで働く年上の彼女だったり、母親だったり祖父だったりと登場人物がみんな魅力的で、油断して読んでいると目頭に熱いものがこみあげてくる。
ただ、ちょっと句読点がしつこい。が、すぐ馴れる模様。
クラス委員長は、ぼくと三票の差で、脇山茂に決まった。
彼は、前に出て挨拶をするために立ち上がった瞬間、振り返り、ぼくの顔を誇らしげにちらりと見た。
相変わらず仕様のない奴だなぁと、僕は思う。
彼は、ぼくが忌々しくてたまらないのだ。
「えー、皆さんに選出されて、委員長を務めることになった脇山です。
まだ馴れないクラスの皆さんが、ぼくを選んでくれたことは、大変光栄で……」
光栄もなにも。ぼくは、頬杖をつきながら、ぼんやりと彼の挨拶を聞いていた。
皆、彼の名前が、試験の成績発表で常に一位の場所に載っているから、書いただけだ。
クラス委員長が誰になろうと知ったことではないのだ。
それなのに、彼は、顔を紅潮させて、喋りまくっている。委員長をやると、進学に有利なのだろうか。
あれ? 大学受験に内申書なんてあったっけ。
離婚した元夫婦が十年後旅先で偶然再会し、そこから文通が始まる。
別れた理由であったり、現状であったり、当時伝えられなかった気持ちであったりを、ゆっくり伝えていく話。
小説の本文がお互いの手紙という構成で、随所に「また長い手紙になってしまいました」とあるが、ほんとだよwと少し笑ってしまう。
(読後にどんな感想を抱いたかは一切書かない。
すっきりしたとかガグブルしたとか。
バラすのは冒頭と裏表紙に書いてあるような簡単な紹介程度なのでご安心を)
前略
蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リストの中で、まさかあなたと再開するなんて、本当に想像すら出来ないことでした。
私は驚きのあまり、ドッコ沼の降り口にたどり着くまでの二十分間、言葉を忘れてしまったような状態になったくらいでございます。
あなたに、こうしてお手紙を差し上げるなんて、思い返してみれば、それこそ十二、三年ぶりのことになりましょうか。
もう二度と、あなたとはお目にかかることはないと思っておりましたのに、はからずもあのような形で再会し、すっかりお変わりになってしまったお顔立ちやら目の光やらを拝見して、私は迷いに迷い、考えに考え抜いて、とうとう思いつくすべての方法を講じて、あなたのご住所を調べ、このような手紙を投函することになってしまいました。
私の我が儘を、こらえ性の無い相変わらずな性格をどうかお笑い下さい。
>>12
>>14
葉桜の季節に君を想うということ ★★★★★
歌野晶午 文集文庫
歌野晶午は三本の指に入るくらい好きな作家で、とくに今作は面白いし読みやすい。
射精したあとは動きたくない。相手の体に覆い被さったまま、押し寄せてくる眠気を素直に受け入れたい。
以前歯医者の待合室で読んだ女性週刊誌に、後戯のないセックスはデザートのないディナーのようふふ、というようなことが書いてあったが、男から言わせてもらえればふざけるなバカヤローである。
射精した直後に乳など揉みたくない。
たとえ相手がジェニファー・ロペスであってもだ。
男という生物の体は、エデンの昔からそうできている。
なぜ俺がそういうことを考えているのかというと、今まさに精を放出し、女の腹の上で荒い息を吐いているからだ。
>>16
砂の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められた男の話。
穴の底の一軒家には女がいて、そいつとなんやかんやある話。
けっこう昔の話だけど設定が面白くて引き込まれた。
八月のある日、男が一人、行方不明になった。休暇を利用して、汽車で半日ばかりの海岸に出かけたきり。消息をたってしまったのだ。
捜索願も、新聞広告も、すべて無駄に終わった。
むろん、人間の失踪は、それほど珍しいことではない。統計のうえでも、年間数百件からの失踪届が出されているという。
しかも発見される率は、意外に少ないのだ。
殺人や事故であればはっかりとした証拠が残っているし、誘拐のような場合でも、関係者には、一応その動機が明示されるものである。
しかし、そのどちらにも属さないとなると、失踪は、ひどく手がかりのつかみにくいものになってしまうのだ。
- 作者: 森見登美彦
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20: 名無しさん 2014/05/26(月)20:45:39 id:kOOBw6KDaちょっとくせのある男が主人公の恋愛ファンタジー。
視点としては主人公の男と、片思い相手の「黒髪の乙女」の2パターンがある(確か)
非常に読みやすく面白いおすすめの一作。
これは私のお話ではなく、彼女のお話である。
役者に満ちたこの世界において、誰もが主役を張ろうと小狡く立ち回るが、まったく意図せざるうちに彼女はその夜の主役であった。
そのことに当の本人は気づかなかった。今もまだ気づいていまい。
これは彼女が酒精に浸った夜の旅路を威風堂々歩き抜いた記録であり、また、ついに主役の座を手にできずに路傍の石ころに甘んじた私の苦渋の記憶でもある。
読者諸賢におかれては、彼女の可愛さと私の間抜けぶりを二つながらに熟読玩味し、杏仁豆腐の味にも似た人生の妙味を、心ゆくまで味わわれるがよろしかろう。
願わくは彼女に声援を。
普段SFかミステリしか読まないから新鮮
23: 名無しさん 2014/05/27(火)09:13:57 id:J9avsNtaN無残に殺された娘の仇を討とうと父親が復讐に動き回る話。
東野圭吾は総じて読みやすいけど、これは序盤から登場人物が可哀想で読むのが大変だった。
真っ直ぐに伸びた重心の鈍い輝きに、長峰は心の奥底が疼くのを感じた。
かつて、射撃に熱中していた頃のことを思い出したのだ。
引き金に指をかけている間の緊張、撃った瞬間の衝撃、的に当たったときの快感、いずれも鮮やかな記憶として全身に焼き付いている。
長峰が見ているのはカタログの写真だった。
以前に銃を購入したことのある店が、何年かに一度、新製品を紹介するカタログを送ってくるのだった。
写真の下には、「銃床は半艶仕上げ、イタリア製ガンケース付き」とある。
中学生の女の子が主人公。
学校に合わず、田舎のおばあちゃんの家にしばらく引き取られ、そこで生活する話。
優しいおばあちゃんだったり、思春期の子供特有の、心の成長だったりを描いている。
西の魔女が死んだ。四時間目の理科の授業が始まろうとしているときだった。
まいは事務所のお姉さんに呼ばれ、すぐにお母さんが迎えに来るから、帰る準備をして校門のところで待っているように言われた。何かが起こったのだ。
決まりきった退屈な日常が突然ドラマティックに変わるときの、不安と期待がないまぜになったような、要するにシリアスにワクワクという気分で、まいはいわれたとおり校門のところでママを待った。
ほどなくダークグリーンのミニを運転してママがやってきた。
英国人と日本人との混血であるママは、黒に近く黒よりもソフトな印象を与える髪と瞳をしている。
マイはママの目が好きだ。でも今日は、その瞳は酷く疲れて生気が無く、顔も青ざめている。
27: 名無しさん 2014/05/28(水)00:31:11 ID:6bWiuU8mQ短編連作ミステリー。
ミステリー作品だが、人が死なない。
日常の謎をひきこもりの探偵役が解き明かしていく。
主人公と探偵役との友情がちょっと、ん?となるが、全体を通してみると面白い一作。
蝉の声が弱々しい。つい昨日までは今を盛りとばかりに鳴き叫んでいた連中が、一夜にして瀕死のうめきをあげている。
濃い緑の形が落ちた道を、ぼくは汗をぬぐいながら歩く。
恐怖というものは人それぞれで、ぼくの知り合いにはこういう道を一人きりで歩くのは絶対に嫌だ、という奴がいる。
白昼夢の中の登場人物になってしまったようで耐えられないんだそうだ。
僕はといえばいたってノーマルなもので、やはりこういう道は夜中の方が怖い。
最近はこの近所でも女性を中心に狙う通り魔や、不特定多数の人間に殴りかかろうとする傍観が出没しているとの噂も聞くし、何かと用心するにこしたことはないだろう。